« 2009年08月 | メイン | 2009年10月 »

2009年09月14日

New comer

 才能あふれる新人が鷹取に登場! 何よりも鷹取クライマーの平均年齢が一気に若返ることに効果あり。

投稿者 sue_originalcv : 13:51 | トラックバック

2009年09月03日

カナダ・スコーミッシュ旅行記

 8月21日から9月1日までカナダのスコーミッシュに行ってきました。ここにその旅行記を掲載します。

 現地ではJBさん、TBさん、CCさん、そして、Scrapperから言葉で表現できないほどたくさんのご好意をいただきました。そして、スコーミッシュの陽気なクライマーの皆さんからも新鮮な活力をいただきました。  また、同行させていただいたFさん夫妻からは、クラッククライミングのテクニックをイロハから教えていただきました。  ここに改めて御礼申し上げます。
  ビデオ作品「RELAXATION AT MOMENT -CLIMBING IN SQUAMISH-」のオープニング映像はこちら

8月21日 Vancouver
 YCATでF夫妻と合流し、リムジンバスで成田空港へ。第1ターミナル南ウィングで下車。

 Unitedのチェックインカウンターは人だかりである。驚いたことに、このたくさんあるカウンターで係員は数名しかいない。では、どうやってお客はチェックインしているのかというと、コンピュータのタッチパネル端末を使って自ら処理を行うのだ。
 近所のHさんにこれを話をしたら、それだけで卒倒しそうだ。ここまで省人化が進んでいるとは‥。5年後には人も完全にいなくなって、ロボットだけになっているかも。

 サンフランシスコに日本時間で午前3時到着。こちらの時刻は21日の午後0時。さて、ここでも一旦、入国審査を通らねばならない。審査官の前に進み、両手の指紋をチェックされ、メガネを外して顔のチェックをしているとき、審査官がいきなり話かけてきた。"Your glasses are nice!" "Thank you so much."と、答えたけど、メガネを誉められてどうなるってんだ?

 1時間遅れて、ようやくVancouverに到着。CCさんが出迎えてくれた。車でStanley ParkなどVancouverの街を紹介してくれた後、一路Squamishへ。
 車の中で、CCさんは次のように語っていた。「昨年までSquamishに来る日本人クライマーは数パーティだったのに、今年は日本人クライマーをいたるところで見かけますよ。」
 ま、そのうちの一人が私と言うことにもなるけれど‥。

 SquamishのBさん宅に到着。

 「これから1週間ご厄介になります。宜しくお願いします。」は日本人のセリフだけど、この「宜しくお願いします。」が英訳できないのであった。韓国語では「チャル・プタクハゲッスムニダ」っていうんだけど・・・。インド・ヨーロッパ語族とウラル・アルタイ語族との違いかなあ。

Vancouverに入る高台からVancouverの街を見下ろすBritish Columbia産Siraz種の珍しいワイン


8月22日 Neat And Cool
 朝起きて窓から正面を眺めると、Squamishの入り江と下町がきれいに見える。左手にはSquamishの看板ウォールThe chiefの北面が大迫力だ。氷河が削ったU字谷の景色が美しい。

 朝食を済ませた後、玄関を出て50m歩くとNeat And Coolの岩場に到着。ここに住む人は岩と共に生活している。
 岩質はきめの細かい花崗岩。クラックとスラブのメッカである。早速、Flying Circus 5.10aから取り付く。トップロープなんだけど、お尻が引けてしまう。馴染むまで少し時間がかかりそう。Fear of Flying 5.11a, Geritol 5.10c, Ali Butto 5.11a, SM's Delight 5.10b, Mosquito 5.8, Sphinx'ter Quits 5.8をトライ。

 夕方、充実したクライミングを楽しんだ後、お世話になっているBさん宅へ帰宅。そして、今日はJBさんの誕生日なのだ。そのバースデイパーティのために、20数名のクライマーが集まってきた。その中には私達と同様に昨日到着した日本人クライマー4人も含まれる。陽気で楽しい仲間達の素晴らしいパーティだった。

50m歩けば、そこは岩場Flying Circus 10aを登るTBさんGeritol 10cを登るCCさん


8月23日 The Chief - Grand Wall Base
 朝寝坊をしてしまった。5時ぐらいに目が覚めてしまったので、それから7時頃までこのレポートを書いていた。少し横になろうとベッドに横たわったら10時まで爆睡。SFさんがドアを叩かなっかたら、もっと寝ていたかもしれない。

 買い物に出かけて、午後からThe Chief - Grand Wall Baseエリアに向かった。
 The ChiefはSquamishの看板ウォール。Grand Wall Baseエリアはその基部である。見上げると、すごい大きさだ。そして、綺麗なクラックが何本もスーッと走っている。通常なら、日曜日なのでいつも混んでいるそうだが、今日は誰もいない。TBさんは非常に珍しいと語っていた。
 それなら、人気ルートから始めようということで、Exasperator 5.10cに取り付いた。2ピッチ60m。白いクラックが1ピッチ目は真っ直ぐ、そして、2ピッチ目は逆くの字上に伸びている。SFさんはこの2ピッチを一気に、いつも登っているかのようにオンサイト。そして、TBさんは逆くの字の上の部分を手と足を伸ばし、そして、手とつま先がくっつきそうなぐらいなレイバックで華麗に登った。

 次にトライしたルートはSeasoned In The Sun 5.10a。フットホールドのつま先がクラックにきまって痛い。下手な私はその痛さに耐えきれずテンション。
 今日はこの2本のルートで十分に満足した。

Exasperator 10cを登るSFさんExasperatorの核心Seasoned In The Sun 10aを楽々と登るTBさん


8月24日 The Zip
 今日は滞在させていただいている家のJBさんとTBさんはお出かけ。この家の犬Scrapperの散歩を申しつかったので、一緒に岩場まで連れて行くことにする。これは正確な言い方ではなかった。Scrapperはこの辺りでは知らない人がいない有名犬なので、お供をさせていただくと言った方が適切だ。

 最初はThe ZipエリアのThe Zipというルートに取り付いた。実を言うと、今日の朝、SFさんから何度も説明していただいているクラッククライミングテクニックのコツが頭の中で少し理解出来たのだ。このルートで試してみたら、なんと、急に動きが良くなったではないか。これまで苦痛だったクラッククライミングが急に面白くなってきた。いいぞ、いいぞ。

地元では有名なScrapperThe Zip 10aを登るTFさんPenny Lane .9に軽々と取り付くSFさん


8月25日 レスト
 本日はレスト日。昨夜、予想通りに雨が降った。これじゃ登れないよね。

 9時20分、Squamishを出発するバスに乗り込み、VancouverのRoyal Parkで降りた。CCさんが車で迎えに来た。今日は彼女がVancouverの街を案内してくれる。

 まずは子供たちがカヤックを楽しんでいるDeep Coveという入り江のドーナツショップで朝食をとった。サンドイッチとカプチーノを食したが実に美味しい。

 クライミングショップで買い物をした後、UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)の敷地内へ。ローズガーデンを通り抜けて新渡辺記念庭園へ行く。CCさんはNitobe(にとべ)をナイトビーと発音していた。ここでもカルチャーの違いを感じる。数ヶ月前に天皇陛下、皇后陛下もここをご訪問されたという。そういえばTBさんは両陛下ご訪問の際にフライトアテンダントをしたと言ってたっけ。
 次にCCさんはビーチに私たちを連れて行った。このビーチへの降り口に「Closing is optional 」と書かれた看板があった。降りて行くと、そこはヌーディストビーチ。もちろん、ヌーディストばかりではなく、サーフィンや散歩を楽しんでいる人達もいる。そして、一番驚いたのはこのビーチもUBCの敷地内だということだ。この大学に入学した学生は卒業したくなくなるのではないだろうか。
 帰りの上り口には「Clothing is required」と書かれた看板があり、ここから先は秩序を取り戻さなければならない。俗世間に戻るということなのだろう。

 美しいSunsetを見ながらCCさん宅へ。木立に囲まれた閑静な場所だ。ドアを開けて中に入ると香りの良いお洒落でカラフルな石鹸が大量に出来ていた。彼女は石鹸を作るのだ。つまり、石鹸女なのであるが、日本で訳すと変に間違われそうだ。

食欲をそそるサンドイッチここから衣服を着けるのはオプションこのビーチもUBCの敷地内


8月26日 Nightmare Rock
 CCさん宅で起床。彼女は今日も有給を取って、クライミングに一緒に出かけると言う。今、こちらに滞在しているもうひとつの日本人グループYHさん達とNightmare Rockで合流。このエリアは大きなオーバーハングがある。このコーナーをトラバースするルートGrandaddy Overhang 11cに、SFさんが果敢に取り付いた。
 ここは垂直の壁とオーバーハングの間にクラックが走っており、それをアンダーハンドで効かしながらトラバースする。なおかつ、そのクラックに慎重にカムをきめなければならない。いやでも緊張が高まる。
 私もフォローで取り付いたが、こういうルートをリード出来るようになったらいいなあ。

Grandaddy Overhang 11cを登るSFさんGrandaddyをフォローするTFさん トラバースなのでフォローといえども怖いPerspective 11aをオンサイトするSFさん


8月27日 The Chief - Grand Wall Base
 今日はマルチピッチにチャレンジした。The Chief - Grand Wall BaseのPeasant's Route 10c 6ピッチである。
 1ピッチ目の出だしにレイバックがあり、いきなり緊張した。これが続くのかと思うとぞっとしたが、数メートル登ると楽になった。やれやれ。

 このエリアは、朝は日陰で涼しい。昼から太陽の光が当たってくると暑くなる。
 高度が上がってくるとSquamishの街全体が見えてくる。筏で上流から運んだ木材が入り江に積まれ、そして、大きな貨物船がゆったりと停泊している。ライトブルーの空、遠景には氷河を抱いた凛々しい山山、深い針葉樹や広葉樹の森。ため息をつくような美しさだ。

 最後のピッチは凹角を途中まで進み、そこから大きく乗り込んで左のフェイスに出なければならない。フェースに立ち上がるとき、すごい高度感で腰が引けてしまう。SFさんはこのルートファインディングを間違わずに切り抜けた。さすがだ。
 そして、終了点。最後は握手をしてジ・エンド。

 この隣のマルチピッチルートにはドイツ人グループ7人が取り付いていた。このルートの途中に、ナイフのようにスパッと切れた40mのクラックがある。怖いほどに美しい。あのクラックを登るとなると、しびれるだろうなあ。

Peasant's Route; 5 pitch目 SFさんはランナウトしても集中して登っている6 ptich目の核心部をルートファインディング6 pitch目のアタック開始


8月28日 The Grand Wall
 出張から帰って来たJBさんと、そしてその奥さんのTBさんも一緒にクライミングに行くことになった。行くところはなんと昨日ドイツ人グループが登っていたマルチピッチルート。Squamishを代表する有名ルート The Grand Wall である。
 なんでそうなるの? あの40mのスパッと切り立ったクラックを登らなければならないと思うと、ルートに取り付く前から緊張する。

 1ピッチ目。前のパーティのセカンドがナッツを回収出来ないでいる。セカンドの女の子は頭が真っ白になっているに違いない。可哀想に。結局、彼らは回収を諦めて1ピッチを登っただけで降りてしまった。1ピッチ目と2ピッチ目のクラックもそんなに簡単だというわけではない。
 3ピッチ目と4ピッチ目はボルトが3本ぐらいしか打っていないスラブ。これを登りきった時点でThe Grand Wallの傾斜が寝ている部分は終わり、Verticalな世界が始まる。
 5ピッチ目は右方向へトラバース。Pillerの一部である一枚岩の下側をへつる。一旦下がって、また、登るのだが、横から撮影するとSquamishの入り江の遠景が見えて高度感がある。
 6ピッチ目はボルト3本のA0。

 そして、7ピッチ目はいよいよ核心のSplit Piller。スパッと見事に切り立った40mのクラック。SFさんはジャムを決め、カムをセッティングしながら、安定して登った。この美しいクラックを楽しく味わって登っているようだ。
 次に私の番だ。SFさんが持っていかなかった残りのカム類を持って上がれという。重い。ここに置いていっちゃいけないの。懸垂するときに回収すればいいのだから。これじゃ新人いじめのしごきじゃない??? ついつい泣きが入る。ビデオカメラと余ったカム類を肩から提げてトライ開始。
 クラックの長さと高度感で怖さが先に出て、これまで習ってきたハンドジャムのテクニックなど吹き飛んでしまった。この40mをレイバックで必死になって登った。もう最後はヨレヨレ。でもまあテンションをかけずに登ったからいいか。これをリードするなんて、今の自分にはまったく想像できない。

 TFさんが軽々とフォローし、登りきったところで、みんなで握手。
 このルートを登ったなんて、まったく信じられない。また次回ここに来る機会があるならば、再登したいとも思うが、リードは・・・・。

一瞬のくつろぎ The Grand Wall; 3 pitch目終了点The Grand Wallの核心Split Piller 40mを登るSFさんSplit PillerをフォローするTFさん


8月29日 Penny Lane, Split Beaver
 今日でSquamish最後のクライミング。近くのPenney Laneの岩場へ行き、Quarryman .8とClandestine Affair .9をリードで登った。昨日登ったSplit Pillerの怖さを考えると、リードといえど、今日のルートは全然気が楽。

 それから、SFさんがたっての希望のワイドクラックにトライ。Split Beaver 10b。
 このルートのクラックは最初、フィストが効くぐらいの大きさだが、段々と広がっていき、最後は肩まですっぽりと入るような大きさだ。そして、登りきるところではホールドになるようなものはなく、フレアしていてツルツル。
 SFさんはこれを体を上げてぐいぐいと登っていく。最後は気合でクリア。お見事!としか言いようがない。次に私もトライしたが、足は効かないし、肩はずっぽりと入って、登るような格好にならないし、途方にくれた。引きずり上げてもらってようやく終了点に達した。

 SFさんはこれを忍者の技だという。私は忍者でないので登ることができないのだ。ちょっと待てよ。ということはSFさんは忍者だということになる。伊賀か、甲賀か、今度会ったら聞いてみよう。

 夕方、お世話になった皆さんと一緒にSquamishのレストランへ行った。ほんの気持ちだけではあるが、私達が支払いを済ませた。そして、JBさん、TBさんとお別れのあいさつ。
 「このような素晴らしい歓待を受けて本当に楽しく、充実した毎日を送ることができました。本当にありがとうございました。」というようなことを英語で言いたかったけど、何と言っていいかわからず、「Thank you, thank you, thank you」で終わってしまった。ちょっと情けなかったが・・・。
 TFさんに辞書で調べていただいたら、「I had the time of my life.」という言い方があるそうだ。次回、使ってみようと思う。

 CCさんの車に乗って、VancouverのCCさん宅へ向かう。明日は朝8時発のフライトなので、5時半にはCCさんの家を出なければならない。というわけで、この晩は早く寝るかというとそういうわけにはいかないのだ。CCさんの石鹸作りのお手伝いをする約束をしてしまった。
 CCさんはナポレオンのように少ない睡眠時間でもへっちゃらのようで、活き活きとして石鹸作りを伝授し始めた。
 ここのキッチンはすごい。普通とまったく違う。塩、砂糖、胡椒、醤油などの調味料があると思ったら大間違い。あるのは酸やアルカリの無数の化学薬品。冷蔵庫を開けても、電子レンジを開けても、あちらこちらに化学薬品のビン、ビン、ビン。ジキル氏とハイド氏を思い起こさせてしまう。彼女は怒らせない方が良い。
 私が石鹸作りをすると言ったものの、実際はTFさんが一人で石鹸作りをする結果となってしまった。きっちりといくつかの薬品のグラムを量り、加熱する。73℃になったらもう一方の薬品と混合。化学反応をゆっくりと起こさせながらかき混ぜる。固まり始めると、色を付けたり、香りを付けたり、ハーブなどあしらってお化粧をしたりとこの部分はまさにアートだ。棒状の木枠の型に流し込んでおしまい。固まるまで3日かかる。そして、それを通常使う四角の大きさに切って、さらに一ヶ月間放置。これで完成となる。石鹸作りは大変なのだ。
 もう午前1時を過ぎてしまった。寝よう。

Split Beaver 10bをオンサイトするSFさん>石鹸作りは正確な分量が大切2色を混合してカラフルな石鹸に仕上げる


8月30日 LA
 5時半過ぎにCCさん宅を出発し、Vancouverの空港へ。CCさんには荷物を預けるところの最後の最後まで、しっかりと見送っていただいた。本当にありがとうございました。

 帰りはLA経由の成田行きだ。LAに到着してフライト情報を見ると、私達が乗る予定のフライト便がキャンセルになっている。東京に台風が接近しているからだ。
 私は何百回も飛行機に乗っているが、幸運にもこれまでキャンセルに遭遇したことはなかった。今回が初めてである。インフォメーションカウンタは長蛇の列。係員の話によると、まだフライトの見通しが立っていないとのこと。配布している赤い紙に書かれた電話番号に連絡しホテルの部屋を取り、そこから今後のフライト情報を確認して、代替のフライト便の予約を取って欲しいという。
 仕方が無い。TFさんが電話でヒルトンホテルの部屋を確保した。ひとまずホテルに入り、フロントの係員から再度フライトの予約をしてもらった。その結果、明日の同じフライト便で予約が取れた。

 安心したところで、バスに乗ってビーチに出ることにした。日曜日ということもあって、ビーチは人、人、人。Vancouverから南に3時間下ってきたこともあって、ここは暑い。考えてみれば、北海道から沖縄へ行くようなものだ。通りにある一軒のパブに入ってビールをあおった。
 こういう展開になるとは誰が予想しただろう。旅は本当に面白いものだ。


 今回お世話になったJBさん、TBさん、CCさんとSFさん、TFさんとの縁はギリシャ・カリムノスで昨年出会ったことがきっかけだと聞いた。SFさんとTFさんのカリムノス行きは、3年前に私の書いたカリムノス旅行記が多少なりとも参考になったという。つまり、ギリシャ・カリムノスが縁なのである。
 しかし、これほどまでにゲストとしてお世話になってよいものかとも思ってしまう。私にご恩返しが出来るとすれば、ビデオ作品を作り、想い出として残してあげるぐらいのものだ。
 でも、私の気持ちとしては彼らにご恩返しできない分を他の方のお世話をすることによりお返ししたいと思う。そして、私から世話を受けた方がその恩返しとして、その次の方のお世話をすることでお返しするならば、世の中めぐりめぐってよい世の中になるのではないかなあ。

投稿者 sue_originalcv : 11:41 | コメント (4) | トラックバック