2012年10月21日

スペイン・イビサ島 旅行記

 10月1日から19日までスペインのイビサ島へ行って来ました。これはその旅行記です。
 ご支援も含めて、この旅行でお世話になったすべての皆様に改めて御礼申し上げます。

10月1日(月) イビサ島へ
 台風17号が過ぎ去って、穏やかな朝を成田空港へ向かった。

 前日、成田東横インに泊まっていたTご夫妻とブリティッシュエアウェイのチェックインカウンターで合流。いざ出発となった。

 スペインへ行くにはまずイベリア航空を考えるのが普通だが、成田からイベリア航空のスペイン直行便は飛んでいない。スペインと日本とは政治的にも経済的にもそれだけ遠い国だということだ。

 仕方なく他の航空会社から選ぶしかない。安いチケットという選択肢ではエアロフロートだが、モスクア経由ということにどうも二の足を踏んでしまった。結局、過去の実績でブリティッシュエアウェイに決まった。

 ところが、最終目的地のイビサ島へ行くのに、ロンドンでヒースロー空港からガトウィック空港に移動して、そこから直接イビサ島へ入ることになる。マドリッドへもバルセロナへも寄らないのだ。スペインの首都に挨拶をせずに、いきなり地方の島に行ってしまうわけだが、今はそれほど飛行機のローカル便が発達していると言うことだろう。

 さて、ヒースロー空港からガトウィック空港へ移動すると言っても一筋縄ではいかない。それほどややこしいということなので、下調べを怠らなかった。

 ブリティッシュエアウェイの機内の座席に付いているディスプレイでヒースロー空港到着後の紹介が出ていた。まず、私たちが到着するターミナルは第5ターミナル。そこから第1、或いは、第3ターミナルにバスで移動して、そこにあるバスセンターからガトウィック空港行きのバスに乗る。

 それだけのことなのだと、頭では理解出来た。

 そして、いざヒースロー空港の第5ターミナルを出てみると、各ターミナルを循環しているはずのバス乗り場がない。バスの発着場の端から端まで探したけれど…。
 そこで係員に聞くと、「地下鉄で行け」という。結局、現在は各ターミナルを循環しているバスは出ていないらしい。すでに、ブリティッシュエアウェイの機内情報は古くて間違っていたのだ。

 地下鉄乗り場へ急いで行った。市内へ入るには、もちろん、チケットを購入しなければならないのだが、第1と第3ターミナル行きはどうやらフリーらしい。急いでいたので、はっきりとはわからなかったが、有料と無料でプラットホームの乗り場所が違うのではないかと思う。ま、それでも地下鉄に乗って、第1、第3ターミナル駅にまでは着いた。

 さて、そこからガトウィック空港行きのバスが出ているバスセンターまで行くのだが、これが遠い。地下道を歩きに歩いた。そして、バスセンターにとうとう到着。

 そこでバスの発着を示すディスプレイを見た。はっきり言って、分かりにくい。発着時刻と目的地が書いているのはわかる。しかし、出発するバス乗り場の番号までは書いてない。どこから乗ればいいんだ?

 そして、いつもの通り、係員に聞くと、「次は747番と表示のあるバスに乗ればいいのよ。わかる?OK?」と子供を諭すような口調で言う。
 はいはい、747番のバスに乗ればいいんだね。

 私としては、どうも胡散臭くて信用出来ないので、バス発着のディスプレイを見に行くと、747番のバスはブリトン行きになっている。「違うじゃん」とは思ったものの、良く見ると、ガトウィック空港経由ブリトン行きだった。

 このバスに乗ると、心配していたラッシュ時の渋滞もなく、無事にガトウィック空港に着いた。めでたし、めでたし。

 ガトウィック空港の手荷物検査は、ヒースロー空港以上に厳しい。体中を触りまくられて、検査された。確かにテロリストにとっては、ローカル空港の方が狙いやすいということだろう。

 そして、とうとうスペインのイビサ島に到着。時刻は深夜の12時を回っている。ここにホテル行きの車が待っているということだが…。

 閑散とはしているけれど、エージェントはいた。さすがにイビサ島は若者が酔いしれる島であり、不夜城である。そして、予定通りにバンに乗って、今晩泊まるホテルの前に着いた。

 その路地裏は若者がたむろしているバーがあり、ロックミュージックがガンガンにかかっている。ホテルの入り口へ行くにはそのたむろしている若者の中を通っていかねばならない。場違いの感じは否めない。その若者の中を分けいって、ホテルのドアを開けて中に入ると、ふーっと一息ついた。

 「何時ぐらいまで、この音楽は鳴り響いているのですか」とホテルのフロントで聞くと、「午前2時には終わるよ」とのこと。疲れているけど、眠れるのであろうか。

Eivissaで宿泊したホステルLa Marina港の散歩港にある石像の前で


10月2日(火) Cala Vadella
 朝は7時を過ぎてから、明るくなった。外に出て見ると、目の前はヨットハーバーだ。昨日は、海に面したこじんまりとしたホテルに泊まっていたことになる。深夜の喧騒は嘘のように、今は静かだ。路地に設置されていたバーはきれいに片付けられ、水が撒かれていた。アルコール臭さなどはなく、静かな港町の風景がそこにあった。

 カフェレストランの外のテーブルで朝食を取った。

 ホテルをチェックアウトして、一旦、空港に戻りレンタカーを借りた。地元のレンタカー会社を使ったので、料金は安い。カーナビも付いている。しかし、設定の仕方がわからない。というよりも機能が限られていて、細かい目的地の設定は出来ないようだ。

 カーナビに頼るのは諦め、地図とコンパスを使って人間ナビを行った。ロータリーには戸惑ったが、道幅も広く、案外と島は小さいので、ナビ自体は難しくはない。無事にCala Vadellaのアパートメントに着いた。

 まだ、昼過ぎなので、早速Budaの岩場に行って見ることにした。岬の先にある島Es Vedraは荒々しくて美しい。オデッセイの旅する怪物の島のひとつかと間違ってしまう。そして、この辺りの松の葉は若緑で真っ青な空によく映えた。

 さて、岩場へ行こうと道を右に曲がったのだが、岬の先端に続く稜線に出てしまった。眺望は素晴らしいが、岩場は足の下にあるのだ。本日は大汗をかいただけで、岩場の取り付き点に着かずに終了。こういう日もあるさ。宿に帰ってビールを飲もう。

イビサ島の西にあるCala Vadellaの日の出オデッセイの話に出て来そうなEs Vedraヒッピーが作ったケルン・・・若者たちはAtlantisを求めてこのパワースポットを通る


10月3日(水) Rampante de Buda
 今朝は以外と冷えた。毛布1枚追加しても良いくらいだ。

 さて、今日から本格的にクライミングである。Budaの岩場の駐車場から、間違えないようにビーチの方に降りて、右に曲がった。右側は延々と続く大きな岩壁だ。Rampante, Colorado, Cuevasとエリアのルートを見ると石灰岩のフェースである。

 6aといっても、ツルツルでとても登ろうという意欲がわかなかった。まして、南向きなので、まともに陽が当たって岩は熱くなっている。昨年のFinare Ligreのように、登る前に敗退ということが脳裏を過った。

 しかし、気を取り直して、もっともやさしいエリアのRampanteからスタートすることにした。
 EGB 4+, Si no lo ves, no te lo des 6a, Uno + uno 4+
 ルートに取りつくと、横から風が吹いて、さわやかだ。真っ青な空、紺碧の海、白い壁。透き通った空気の中の景色は抜群のコントラストである。日本にはない風景だ。これを味わえただけでも成果ありである。

 夕方、サンセットを見るために入り江に歩いていった。午後7時半過ぎに大きな真ん丸な太陽が水平線に綺麗に落ちていった。イビサ島のサンセットは有名だが、その意味が私にも初めてわかった。これは見た人でなければわからない。この美しさの表現方法がわからないのだ。先端の岬にいるのはカップルばかりだった。

Uno + uno 4+Uno + uno 4+Cala Vadellaのサンセット


10月4日(木) Es Vedra de Buda
 Budaのメインのエリアは南西を向いていて、ほぼ1日太陽が照り付ける。木陰になるところがあれば、ビレイヤーは助かるが、日差しに晒されている場合は、それだけで疲れてしまう。
 そこで、メインのエリアの反対側の北東面にもエリアがあることに気付いた。Es Vedraという小さなエリアであるが、そこに行ってみることにした。

 いつもの駐車場から岬の尾根を登らずに、その尾根を左手にみながら、車道のような広い道を進んで行くとEs Vedraという島が見えるビューポイントに出る。この景色は圧巻だ。観光客もここまでは大勢やってくる。このビューポイントのすぐ下は海岸まで切れ落ちているが、そのひとつの横穴にヒッピーが住み着いている。イビサ島はヒッピー発祥の地らしいので、ここでは違和感を感じることではない。

 そうそう、この島には蚊がほとんどいない。私の経験では世界中何処に行っても蚊がいるので、私は蚊対策にはいつも万全を期している。しかし、今回ばかりは無用の対策だったようだ。

 話を戻して、横穴生活をしても蚊のような虫対策をしなくていいというのは大きなメリットだ。このイビサ島がヒッピーにとって住みやすいというのも、そういう小さなことが理由のひとつかもしれない。

 さて、クライミングエリアに着いてみると、良いですね。予想した通りのシェード。暑く無くて、さわやかだ。早速、Flower Power 5+ 30mに取り付いた。右手に見えるEs Vedraの島を見ながらのクライミングは最高である。
 そして、New Age 6b+とHunabku 7a+を登って本日は終了。楽しいクライミングを満喫出来た。

Es VedraのView PointにてFlower Power 5+New Age 6b+


10月5日(金) Pueblos Oprimidas と Restaurante Maria Luisa
 朝方、多少曇り空であることを見て、Pueblos Oprimidasエリアへ行った。ここはうすかぶりの壁。ホールドは大きそうに見え、ツルツルのフェースでないところに興味を覚えた。
 Palestina 6aに取り付いてみると、見た目以上にかぶっている。そして、ホールドはサイドプルあり、アンダーありと多彩である。日本なら6b+と設定してもおかしくない。やはり、このエリアのグレード設定は厳しいと思う。その隣のKurdistan 6a+は甘いサイドプルに、体の振りを要求されるので、一層厳しい。このエリア全体に慣れるために、やさしいルートをたくさん登った方が良さそうだ。

 ここで、空から雲がなくなり、太陽からの日差しが直接岩壁に当たった。暑すぎるということで、一時木陰に避難。その内、気力も萎えて来たので、宿に戻ることにした。

 帰り際、ヒッピーの一人と目が合った。彼は仏教式に手を合わせて、私に挨拶をした。私も同様に手を合わせて彼に挨拶をした。彼の笑顔はとても人懐っこいものだった。ひょっとしたら私にもヒッピーに近い要素があるのかもしれない。

 さて、今日は地元のレストランに行ってみることにした。Restaurant Maria Luisa。スペインと言えば、パエリアでしょう。豪華にシーフードパエリアをお腹一杯に食べた。明日はクライミング出来そうにない。ご馳走様。

Palestina 6aパエリアパエリアを盛り付けるウェイター

10月6日(土) ヒッピーマーケットLas Dalias
 本日はレスト日。イビサ島の東にあるSant Carles de Peraltaで、毎週土曜日にヒッピーマーケットが開かれているというので行ってみることにした。このヒッピーマーケットの名前はLas Dalias。
 午前11時頃に、この駐車場に着いたが、すでに相当数の車が停まっている。係員に駐車場代の3ユーロを払って、マーケットの中に入った。

 正直言って、その質の高さに驚いた。これまで屋台の出る蚤の市と言えば、何処かで作らせたものを卸して来て、安く売るというのが相場だ。よって、それぞれの屋台に出る商品も似たようなものが多く、少し見ると飽きてしまう。

 ところが、このLas Dariasに屋台を出している人達は本物のヒッピーなんだろう。自分で作ったものを出している。他の屋台と似たようなものがあったとしても、それは決して同じものではなく、何かしらの工夫が凝らされている。だから、屋台の前に立っている人達はその店の売り子というよりは、それぞれがアーティストであると言った方が近いような気がする。

 スペインはガウディやピカソを生んだ国だ。その卵達がこのマーケットで新しいものを作り出しているのだろう。ここに来るイギリスやドイツからの観光客はここでお金を落として、たくさんのお土産を買っていた。ここは確実にイビサ島の観光スポットである。

Las Daliasイビサ島にいるほとんどの観光客が訪れているのではないか?見飽きることがないTaさん


10月7日(日) Es Vedra de Buda
 明日移動するので、Budaのエリアでは、最後のクライミングとなる。直射日光が当たるメインエリアは避けて、Es Verdaへ行き、まだ登っていない右側の3本のルートを登って、おしまい。
 結論から言うと、イビサ島を代表するBudaのメインエリアはもっと涼しい時期にトライした方がよい。

 今日は霞みが出て、日本の春のような天気だった。しかし、私達がイビサ島に入ってから、未だに雨は降っていない。


10月8日(月) Port de Sant Miguel
 さて、今日はCala VadellaからPort de Sant Miguelに移動する。言うなれば、Ibiza島の西海岸から北海岸に移動するわけだ。

 車のナビの使い方も段々とわかって来た。アドレスから入力すると、決められた限りのある地域しか出て来ないので、ちんぷんかんぷんなのだ。しかし、マップをみて、行きたいところをタッチパネルで直接指定すればOK。
 また、Ibiza島の道幅は広いので、運転しやすい。イタリアのシチリア島やフィナーレ・リグレとは大きな違いだ。

 そうして、ほぼ迷うことなく、Port de Sant Miguelに到着。驚いたことに、ここはビーチに面した全くのリゾート地である。イギリス、ドイツから、老夫婦であったり、家族連れであったり、たくさんの観光客が押し寄せている。

 このような規模の大きいところのレストランはあまり期待出来ないので、スーパーマーケットに買い出しに出かけた。ガソリンスタンドのおじさんに聞くと、「大きなスーパーマーケットは19km先のEivissaにある」という。つまり、大きなスーパーマーケットは大きな町であるEivissaとSant Antoniの近郊にしかないということだ。

 それでも小さな島なので、30分もかからずに着いてしまう。なぜ、大きなスーパーマーケットにこだわるのかと言うと、食材が圧倒的に安くて、圧倒的に美味しいからだ。ムール貝は1kgで1.7ユーロ。別段に味付けをしなくても、揚げたり、炒めたりするだけで、素材がいいので十分に美味しい。

 その調理をするにも現地ではなかなか手に入らないものがある。昨年の経験から、今年は固めるテンプルと片栗粉を持って来た。これで心置きなく揚げ物ができる。本日の夕食は新鮮なエビといかの揚げ物。原産地指定の白ワインで大いにスペインを味わっているのだ。


10月9日(火) Sol y Sombra, Santa Agnes
 ドイツやイギリスから来た観光客がはめをはずすのだろう。今朝3時頃までうるさくて、眠れなかったので、部屋を替えてもらうことにした。新しい部屋への移動で手間取り、出発時刻は多少遅れた。

 まずは近くのSol y Sombraに行ってみることにした。13kmの標識から右に入り、狭い道を上っていく。分岐は分かりにくく、舗装している道を選んでいくと、14kmの標識のところへ出てしまった。Port de Sant Miguelの方へ1km戻ってしまったのだ。

 再トライ。再び、13kmの標識から右に入る。ほぼ上りきったところから左のダート道に入る。地図に書いてあるCan Joan de Sa Torreまではわかったが、それ以降の地図に書いてある対象物がわからない。そのうち、ダート道は荒れて普通自動車で通るには難しくなった。Sol y Sombraのクライミングアリアを見つけ出すことは出来なかった。ギブアップである。

 気持ちを入れ替えて、Santa Agnesのエリアへ行ってみることにした。

 Sant Mauteuから右に入り、車一台が通れるほどの農道を西にひたすら走る。石にCan Puyoletとペンキで書かれたところを右に曲がる。悪いダート道を北へ進んで行き、Can Puyoletを越えて、さらに進むと広いスペースに出た。多分、地図に書かれている3つのパーキングのひとつなのであろうが、はっきりとわからない。チェーンソーの音が聞こえるので、その家へ行き、お兄さんに地図を見せて岩場への道を尋ねた。そうすると、英語で答えて来た。

 「クライマーがよく道を尋ねに来るんだよ。この地図じゃあ、わからないね。私はクライマーじゃないので、エリアの名前はわからないが、多くのクライマーが行く2つのエリアがあるよ。
 ひとつは来た道を100m戻って、そこから右に入る。分岐を左、そしてまた、左に曲がれば広いスペースに出る。そこから、見下ろすと海岸の崖っぷちが見えるはずだ。細い道を降りて行くと、そこが岩場だ。
 そして、もうひとつのエリアは先ほど見たCan Puyoletの前にある道を入って行くんだ。ペンと紙を持っていたら書いてあげるけど…。わからなきゃ、また聞きに来るといいよ。」

 気さくなお兄さんだったが、私にはなんだかアーティストの匂いがした。ヒッピーというのではないが…。
 さて、お兄さんの言う通りにひとつ目のエリアに行ってみると、ありました、ありました。ここがSanta Agnesでした。素晴らしい眺望だ。

リゾートアパートの部屋からの眺めSanta Agnesののどかな風景Santa Agnesの岩場の上から


10月10日(水) Es Canar
 今日は水曜日。もうひとつのヒッピーマーケットであるEs Canarが開催される。Taさんにとっては、クライミングよりもはるかに重要なわけで、このヒッピーマーケットに行かずにパスする事なんて考えられない。

 Es Canarはイビサ島の東にある港の近くで開催される。観光客の多い港町の通りをそのまますり抜けて行くと、そこにEs Canarの駐車場がある。係員がいて、駐車場代の3.5ユーロを払った。

 さて、マーケットの入り口に来ると、すごい人だかりだ。イビサ島に来ている観光客のほとんどがここに集まっているのだろう。屋台を覗くと、Las Dariasでも出店していた人にもあった。重複して出店している人も当然ながらいるわけだ。
 だからといって、Es Canarが、Las Dariasとまったく同じというわけでもない。女性が喜ぶアクセサリーやドレスが一杯ある中で、それらにまったく興味のない私はミュージシャンの演奏やスプレーを使って即興的に描く画家の絵に興味をもった。

 今回もまた、たくさんのお土産を買った私たちはこのイビサ島の経済に大きく貢献していると自負しながら帰ろうとすると、マーケットの出口がわからなくなってしまった。それほど、Es Canarは広いということである。

 宿に戻って来ると、早速買って来た敷物をテーブルクロスに代用。本日もTaさんの白身魚のソテーとサラダ、そして、ロゼのスパークリングワインで舌鼓を打ち、一日を終えた。

Es Canarの入り口買い出したら切りが無いスプレーだけを使って描く画家


10月11日(木) レンタカー延長とSanta Agnes
 朝、Toさんから「ちょっと問題が発生した。レンタカーの利用を延長するため、Santa Eulariaのレンタカー事務所に行かなければならなくなった。」

 日本のカーナビならば、レンタカーの事務所のアドレスを打ち込めば、そこに達することが出来る。しかし、現在使用しているレンタカーのカーナビはアドレスを入れるところの機能が十分でない。簡単に言えば、当てにならないのだ。その中で、大きな町であるSanta Eulariaのレンタカー事務所を探し出すことが出来るだろうか。

 とは言っても、行ってみるしかない。Sant Eulariaの町に近づくと、現在借りているレンタカーの事務所のひとつを発見した。この事務所でも延長手続きが出来るのではないかと思い、入ってみた。
 おじさんに話をすると、「この事務所での延長は出来ないよ。町の中の事務所に行かなければいけないけど、そこを見つけだすのは簡単だよ。」

 ということで、いい加減に道順を聞いて町に入ったけれど、さっぱりわからない。1時間ほどウロウロして、もう一度先程行った事務所に戻り、道順を紙に書いてもらった。

 その内容は、石造りの橋を越えて5番目の通りを右に回る。その角にはホテルがあるはずだ。そして、その道をゆっくりと道なりに下り、右に曲がったところのすぐ右に事務所がある。

 確かに、紙に書いてあった通りに行けば事務所は見つかったけど、これが簡単なのだろうか。それとも、スペイン人の方向感覚が優れているということか。


10月12日(金) Santa Agnes
 昨日は曇り空で風が強かったが、今日は穏やかに晴れ渡った。

 Santa Agnesのエリアへ行き、まずはアップで、Carola caracola 5を登った。終了点に着くところが少しランナウトするので緊張した。次にAmerican people 6aをトライ。出だしのハングを越えたところが細かい。La abubilla 6a+はハングを越えてレイバックが続く面白いルート。

 最後に、そのアレートの左にあるルートに取り付いたが、出だしが悪く離陸出来ず。最初のピンをA1で越えて登った。最初さえクリア出来れば、かぶり気味のガバガバの快適ルート。本日はこれでおしまい。

 その後、スーパーマーケットに買い出しに出かけたが閉まっていた。どうやら金曜日は休みらしい。あーあ。

American people 6aAmerican people 6a毎日の食卓の一例


10月13日(土) Sol y Sombra探索
 未明に雷を伴って、どしゃ降りの雨が降った。イビサ島に来て、初めてのまとまった雨てある。これだけ降れば、岩も濡れているだろうということで、本日のクライミングは中止。

 しかし、3度トライして、まだ見つけていないSol y Sombraの探索を行うことにした。なぜ、そんなにこだわるかというと、「Nobody can deny the beauty of the place.」とガイドブックに書かれているわけで、どうしてもそこに到達しないわけにはいかない。

 前回引き返した分岐のところのスペースに車をおき、そこから歩いて西に向かった。道なりに進んで行くと分岐があり、そこを北に進んだ(左の道に入った)。すると右手に崖が出て来て、その下がSector Solだった。道を真っ直ぐに進むと見晴らしの良い大きな広場に出る。ここはView pointでこの辺りの海岸が一望に出来る。

 そこから岩のテラスを左手に下り、テラスが無くなるところで右手をよく見ると小さなケルンがある。ケルンに導かれて行くと、ロープが垂れており、ここを下に降りればSector Sombraだ。とうとう目的の岩場を見つけ出した。

 引き返そうとすると、6人ほどのドイツ人クライマーがやって来た。「ここはいろんな岩場を楽しめるんだ。」と教えてくれた。彼らは何度も通っているようだ。
 私たちは元来た道を戻り、駐車している車のところに着いた。しかし、ドイツ人達の車は見つからない。彼らはどうやって来たのだろうか。


10月14日(日) Sector Sombra
 昨日見つけたSector Sombraへ行ってみた。「Nobody can deny the beauty of the place.」という期待は少々外れた。でも、日陰でやさしいルートがたくさんある初心者向けのエリアだ。イビサ島に来たら、体ならしのために、このエリアからスタートしたら良いかもしれない。

 トポに書いてあるグレードと実際にルートの取り付きのところに書いてあるグレードは合っていない。多分、後者の方が適切だろう。4本ぐらいを登って終了。帰りに残置ロープを使って、上までゴボー登りをしなければならないのだが、これが一番疲れるかもしれない。

Sombraエリアへ行くにはまず懸垂下降から5c4a


10月15日(月) Santa Agnes
 昨夜も雨が降り、強い北風が吹いている。気温がぐっと下がった。

 今日はクライミング最後の日。もっとも美しいエリアであるSanta Agnesに行くことにした。岩場へ着くと、海の白波が立っているのが見えるが、岩場自体は思ったよりも風が吹いていない。岩も乾いている。

 終了点出口に大きなハングのあるTonito Bravo 6cにトライ。フェースもしっかりとホールドがあり、ハングもガバッとしたホールドがある。つまり、快適にオンサイト。オンサイトはいつも気分の良いものである。
 次にMazinger Z 6bにトライ。こちらは見た目以上にアンダーホールドが多く、トリッキーだ。鳥の巣などにも気を付けて登った。イビサ島最後のクライミングは快適に終わった。

Carola caracola 5Tonito Bravo 6cTonito Bravo 6c


10月16日(火) Aquarium
 長かったSant Miguelの滞在も本日でおしまい。お昼少し前にチェックアウトした。

 深夜に出発するフライトまで十分に時間があるので、東海岸にあるSant Vicencのビューポイントまでドライブした。山の中を通る時、一体の松林は山火事で枯れていた。ここら辺りは民家も疎らで寂しいところだ。

 次に、一転して、西海岸のSant AntoniにあるAquariumまでドライブ。このAquariumは海岸に出来た自然の洞窟を利用して、作っている。日本の規模の大きい水族館を予想して行くと当てが外れる。しかし、こじんまりとしたこのAquariumも悪くはない。

 一服しようと近くのCafe Restauranteに入り、ピザを食べた後、フライト便の時刻を確認しようと旅行計画書を見たら………。

 確かに、フライト便の出発時刻は0時20分なのだが、日付は10月16日になっている。今日はすでに10月16日の午後4時過ぎじゃない?
 あれ、つまり、私たちの乗るべき飛行機はすでに出発してしまっていると言うこと? あらら。

 まずは落ち着いて、飛行場まで行ってみよう。

 飛行場のInformationに行き、話をしてみると、明日未明のBritish airwayは飛んでいないということ。毎日出ている便ではないようだ。しかし、ロンドンのStansted空港行きのRyanair会社の飛行機ならば21時20分に出ているそうだ。

 早速、Ryanairのカウンターに行って予約。3名の座席を確保。ひとまず、ホッとした。
 日本ではRyanairなんて聞いたこともないが、最近話題の格安飛行機会社のようだ。キャッチコピーが、Fly cheaperなので一目瞭然だが、大ブリテン王国の気品は微塵もない。係員が少ないため、チェックインカウンターは大混雑。座席はフリーなので、乗客は良い座席を得ようと出発ゲートの前に長蛇の列。挙げ句に出発時刻も40分ほど遅延した。疲れること、この上ない。
 とはいえ、無事にロンドンのStansted空港に到着。

 パスポートコントロールでは、私は女性の係員に当たった。
 「入国の目的は? 職業は? 宿泊先は? 一度10月1日に入国しているわね。その間、どこにいたの?」
 余程、私の人相が悪かったのだろうか。根掘り葉掘り聞かれた。

 荷物を引き取って到着出口を出たのは午前0時30分を過ぎていた。この時刻から、電車やバスに乗ることが出来たとしても、到着した駅からホテルまで、深夜の道を歩いて行くなんて危険過ぎる。選択肢はタクシーに乗って、直接ホテルに行くことだけだった。
 タクシーカウンターの係員が、「ホテルまで110ポンドだよ。」と言ったとき、隣のお客は「あらまあ」という表情で目をくりくりしていた。
 ノーウェイ。

Sant VicencのビューポイントAquariumAquarium


10月17日(水) British museum
 ホテルから大英博物館まで歩いて十五分ほどだ。20年ぶりに再びここに訪れた。前回は英語もろくに喋れずにおろおろしていたし、大英博物館の展示物を見て、大ブリテン王国の世界に誇ってきた国力に圧倒されたものだ。当時、私に言うことが出来たのは、負け犬としての遠吠えだけだった。
 「ここにあるものは世界中からかっぱらってきたものだ。大ブリテン王国とは世界の盗人集団だ。」

 今回改めてゆっくりと館内を見学してみた。世界中の遺跡から発掘された遺物を分かりやすく系統立てて展示している。それはそれは見事だ。また、素晴らしいのは、その説明が簡潔で的確であることだ。だから、説明文を読んで展示物を見ると理解がはかどる。
 つまり、ここに来れば世界中の各地の歴史が瞬時にわかる。歴史に興味がある人にとっては、大英博物館こそ世界で屈指の宝の山であると言ってよい。

 また、不思議なもので、世界各国から訪れる観光客は何故か自分の国の展示室が気になるらしい。アフリカの観光客はアフリカのブースを訪れるし、イスラム諸国の人たちはイスラムのブースを訪れる。

 では、アジアというと、中国ブースには中国人が訪れ、韓国ブースには韓国人が訪れる。たまに中国人が韓国ブースを訪れたり、韓国人が中国ブースを訪れることもある。だが、ひとつだけ言えることは日本ブースに中国人も韓国人も訪れることはないということだ。ここでも現在という時勢を感じさせられる。

パルテノン神殿の欄干の石像アッシリアの遺跡アマゾネス伝説


10月18日(木) ヒースロー空港から成田空港へ
 まあ、いろいろとあった今回の旅だが、最後は平安に行きたいものだ。
 ホテルをチェックアウトし10分ほど歩いてRussell Square駅に到着。そこから地下鉄に乗って、ヒースロー空港の第5ターミナルで下車。

 British Airwayのチェックインカウンターに行き、チェックインしようとしたら、・・・。
 「あなたの予約はキャンセルされています」
と係員はいう。
 「キャンセルした覚えはないし、この通りeチケットを見て欲しい」
 「すでにあなたの予約番号の座席はキャンセルされています。ここではこれ以上わからないので、向こうのTicket Informationで確認して下さい。」

 最後の最後まで、いろいろと起こるものだ。Ticket Informationに行って、こちらの事情を説明し、また、British Airwayの話を聞くと次のようなことになっているらしい。
 私たちは10月16日のイビサ島からガトウィック空港行きのフライトに乗っていない。そこで、British Airwayは予約した日本の代理店にキャンセルするのかと確認を入れたようだ。そのとき、日本の代理店はキャンセルすると答えたという。この間、日本の代理店から私たちに何の連絡も取ってきていない。

 私たちと代理店との契約では、フィックスドチケットにはなっておらず、変更可能なオープンチケットになっているので、イビサ島からガトウィック空港行きがキャンセルになったからといって、その後のヒースローから成田までがキャンセルされるのはおかしい。

 と、Ticket Informationの前でいくら騒いだところでどうしようもない。それよりもフライトの出発時刻が刻々と近付いているのだ。残された道はひとつ。新規にヒースローから成田までのチケットを購入するしかない。後の処理は日本に帰ってから代理店との間でやるしかない。

 Taさんのクレジットカードで3人分の代金を払おうとしたら、カウンターのお姉さんから次のように言われた。
 「2人のgentlemenの分まで、1人のladyのクレジットカードで支払うの?」
 そこで私はすかさず答えた。
 「日本のladyはとても強くて、パワーを持っているのだ。」
 負け惜しみ以外の何者でもないのだが、現実は現実である。

 そして、私たちは無事に成田へ到着したのであった。めでたし、めでたし。

投稿者 sue_originalcv : 12:20 | コメント (2) | トラックバック

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