2010年12月06日

スコーミッシュ旅行記2010

 9月3日から18日まで、カナダに行って来ました。Squamishを中心に、Cheakamus Canyon、Sully's Hungout、Horne Lakeでも登りました。今回のクライミングでお世話になりました皆さんに改めて御礼申し上げます。

9月3日 バンクーバー
 午後1時過ぎ、マンションを出発。炎天下の中、重い荷物を背負って、上大岡駅までの山越えが核心だった。
 上大岡駅から横浜駅まで京急で、YCATからはバスで成田空港へ。空港では、無事に参加メンバーのFさんご夫妻、Kさん、そして、私の4人が集合。
 Air Canada 004便は777-300タイプの機種だったが、エコノミーでも座席が横に3人ー3人ー3人掛けで、少しゆとりが感じられた。そして、8時間でバンクーバーへ到着。

 レンタカーを調達して、いざスコーミッシュへ。ところが「喉が乾いた、お腹が空いた」と後部座席から声がかかり、途中でフリーウェイを降りて、街中のピザ・レストランに入った。メニューを眺めていると、下から3番目にPrimavera pizzaと書いてあり、これのラージサイズを注文した。Primaveraはイタリア語で「春」を意味する。たくさんの野菜が散りばめられたピザを食べて、幸先良いスタートである。

 そして、スコーミッシュのBさん宅へ到着。いっぱいのお土産を広げて、1年ぶりの会合を喜びあった。

"Primavera" ピザスコーミッシュのメインの壁 The Chief スコーミッシュの夕暮れ

9月4日 Neat and Cool, Mosquite Area
 曇り、時々、晴れ。風がやや強い。
 Jさんはいつものように、美味しいカプチーノを時間をかけて作ってくれた。ゆったりとした流れの中で朝食を済ませ、外に出た。

 ここから、Neat and Cool の岩場まで50m足らず。ゆっくりと岩場に向かって歩いていると、RさんとDさんが、家の玄関先から「今年もよく来たね」と手を振って喜んでくれた。
 まず、易しいところからスタートする。Cat Crack .6, The Jigsaw Flow .9, Sally Five Fingers .8, Stumps .8

 ここでCさんがやって来た。いつもの笑顔だ。場所をMosquite Areaに移動した。Mosquite .8を登った後、SM's Delight 10bに取り付いた。クラックの効く方向で登っていくと、レイバックになってしまい、スタンスの薄い垂直の部分が越えられない。クラックがY字のボトムになっているところまで手首を突っ込んで抑えて、体の反転を止めた。Sさんに話を伺うと、ハンドジャムが効くようなら、レイバックをしないで、登った方がよいとのことだ。勉強になりました。

9月5日 Burgers and Fries
 曇り、時々、晴れ。
 朝方、少し冷えた。曇り空で風が少し吹くと、ウィンドブレーカーが必要だが、お天道様が出てくると、Tシャツで十分だ。

 さて、今日のエリアはBurgers and Fries。お世話になっているBさんの家の庭を出ると、そこが岩場の終了点である。それを使って懸垂下降する。ここは易しいルートが多いので、ビギナークライマーがたくさんやって来る。

 まず、Bilbo Baggins .9に取り付いた。ハンドジャムとフットジャムの練習には良いルートだ。クラックの基本の練習だと思って3回登ったが、下手なフットジャムのために足が痛くなってしまった。
 次に、High Boltage Line 10a, French Leave 10bのスラブルートに取り付いた。細かいホールドとスタンスを使って登る。小川山の感じに似ている。
 最後に、Burgers and Friesのメインエリアに移動してDusty Eyes 4とCatch Me Quick 10bを登った。易しいルートをたくさん登ることで、少しクラッククライミングに慣れて来たようだ。

9月6日 Cheakamus Canyon
 曇り、時々、雨。あいにくの雨で、今日はレスト日になるのかと思いきや、Jさん達は雨でも登れるエリアに行くと言う。私達も便乗することにした。

 Squamishから北に20kmほど行き、右に折れて急坂を上ったところが、Cheakamus Canyonのエリアの駐車場だ。そこから谷沿いに歩いて5分程度でThe Circusの岩場に到着。ボルトの打っているスポーツクライミング・エリアだ。すでに、10人程度のクライマーが登っている。

 まず、Pig Farm 5.10aに取り付いたが、思いのほか悪い。窮屈なレイバックで切り抜けた。ここの岩質は花崗岩だが、ブロック状になっており、ホールドの効かせる方向がわかりづらい。故に、ルート・ファインディングが難しい。Kigijushi 5.10cはその典型的なもので、私は完全にはまった。
 その後、Boy Pie 5.8, Dark Don't Lie 5.11a, Light My Way 5.10dを登り、終了。久々にスポーツ・クライミングを楽しんだ。

Mosquite Area, A New Route .11aを登るCさんThe Circus, Cut The Chase .12cを登るJさんThe Circus, Light My Way .10dを登るTさん


9月7日 レスト日
 小雨、時々、曇り。
 朝方、雲の中に晴れ間も見えており、クライミング出来るかと思いきや、パラパラと雨が降って来た。
 クライミングは3日間続いているし、今日辺りはレスト日でもいいかな‥。
 周りの岩場を眺めると、小雨の中でもレインジャケットを着て、気合いを入れて、登っているグループもある。Sさんは登りに行きたそうだったが、他の3人の合意でWhistlerへドライブに行くことに決定。

 Whistlerに行く途中にBrandywine Fallsに立ち寄った。私はここで浴びるほど、ブランデーやワインが飲めると思っていたが・・・。

9月8日 The Chief
 晴れ、時々、曇り。
 すがすがしい朝だ。青空が広がり、スコーミッシュに朝陽が射してきた。

 Kさんにとってはあっという間の1週間で、明日、日本に帰国する。その前に、スコーミッシュの看板の壁であるThe Chiefを登っていただかないといけない。その基部からから始まるArrowroot .10bに取り付いた。

 その後、ノース・バンクーバーにあるCさんの家へ移動した。

Brandywine FallsThe Chief, Arrowroot .10bを登るKさん夕方現れた虹

9月9日 Sully's Hungout
 朝起きて、Deep Coveの美味しい店に入って、ブレックファーストメニューにあるサンドイッチを選んだ。デリシャス!
 その後、クライミングショップで、アークトリクスのハーネスをゲット。

 Kさんを空港まで送り、Cさんの近くのSully's Hungoutというエリアに出かけた。
 Cさんは20分で着くと言ったけれど、それは彼女の歩くスピードという条件付き。息を切らして、岩場に着いた。
 森に囲まれて、少し苔で緑がかった壁だ。登ってみると、ホールドもスタンスもしっかりとフリクションの効く有笠山のような岩質だ。
 Speed Dial 5.11a, My One Muscle 5.11a, Special K 5.11aを登った。

 本日の夕食はCさんのスペシャルの鮭料理。とっても美味しい。しかし、レシピがあるわけではなく、味は毎回クリエイトして作るそうだ。

いつも混んでいる人気の店蜂も寄ってくるサンドイッチSully's Hungout, Special K .11aを登るTさん

9月10日 Horne Lake
 Tさんの目覚まし時計の音で、目が覚めた。バタバタとパッキングをして、7時30分にCさんの家を出発。
 バンクーバー島行きのフェリー乗り場に向かった。ゲートに並んで車ごと乗船。日本のように、1台1台車を固定するようなこともない。8時30分に汽笛を鳴らして離岸した。
 どんよりとした天気の中、船首で受ける風は冷たかった。

 1時間半後、バンクーバー島のNanaimoへ上陸。そのまま、Horn Lakeへ向かった。
 フリーウェイを左へ曲がると、途中からダートの道に変わった。上部に岩壁が見えだしたところで、右の細い道に入る。そこに駐車用の空き地があった。

 30分弱、険しい山道を登ると、岩場へ到着。どっかぶりの石灰岩だ。
 You Enjoy Myself 5.11aはガバガバで快適なウォームアップ・ルート。新しい5.11aと5.11cのルートを登った後、Quater Century Girl 5.12aに取り付いた。このルートはまず大きなコルネを登り、そして、小さなコルネの下を右上する楽しいルート。タイのプラナンを思い出す。Tさんはこのルートを見事にオンサイトした。パチパチパチ!

バンクーバー島行きのフェリーYou Enjoy Myself .11aを登るTさんQuater Century Girl .12aを登るSさん

9月11日 Horne Lake
 昨夜はNanaimoまで戻って、安いモーテルに泊まった。

 朝方は薄日が射す曇り。雨の予報が良い方向に外れて、今日もクライミング日和になりそうだ。岩場までの急傾斜の登りは厳しいが、昨日ほど辛くはなかった。岩場に着くと、すでに20人ほどのクライマーがいた。今日は土曜日なのだ。

 ウォームアップをした後、昨日トライしたQuater Century Girl 5.12aを再チャレンジ。Sさんは見事にRP。
 その後、ツルツルの溝を登るMateo Spout 5.11cに取り付いたがまったく歯が立たなかった。
 天気が崩れて来て、Namaimoからフェリーに乗って、バンクーバーに着く頃には本格的な雨になっていた。

9月12日 レスト
 ノース・バンクーバーのCさんの家で起きると、外はシトシトと雨が続いていた。Deep Coveの例のマフィンの美味しい店で朝食をとった後、Cさんの家で石鹸作り。

 その後、Cさんの指導によるヨガ。
 「エネルギーを内に貯めて‥」と始まったが、初心者向けを通り越して中級者向けに入るような内容。結構、体に応えた。

 夕方、Cさんの家を出て、この春に日本でお会いしたスコーミッシュのPさんの家に向かった。もう暗くなっていたので、番地の確認に戸惑ったが、Pさん自ら家の外で出迎えていただき、やっとで到着。一昨日から続いた雨は上がり始めていた。

9月13日 Penny Lane
 雨が上がって、すがすがしい朝だ。2日間降り続いた雨でThe Chiefの大岩壁は濡れていた。
 PさんがThe Chiefの白くなっている部分を指して、「Dancing Bearだ」と語ってくれた。そう思って見ると、本当にDancing Bearのように見えてしまう。また、ある人は魔法使いのように見えるともいっていた。

 青空の下、Penny Lane 5.9に取り付いた。きれいなクラック・ラインだが、ムーブが色々とあって、私にとっては難しい。
 その後、トップロープにして、Crime Century 11cをトライしたが、まったく歯が立たなかった。
 次に、Climb Punish 10bをトライ。核心の一手が遠く、難しい。

 体が萎えてしまったところで、Health Hazard 10aをリードで取り付いた。昨年はトップロープで登っていたので、スポーツ・クライミング・ルートと思っていたが‥。2本目のボルトにクリップしたところで、動けなくなってしまった。そのまま、テンションをかけて降りて、もう一度、ギア1セットを持ってトライ。眠気が吹っ飛んだ。

 7時半を過ぎて遅くPさんの家に戻ると、Tさんが心配してドアの外で待ってくれていた。すみません、ご心配をおかけして。
 Tさんは巻き寿司など日本食を作っていた。ありがとうございました。

Climb Punish .10dを登るSさんPenny Lane .9を登るTさんTさんのハンドメイドの寿司

9月14日 Octopus Garden
 Smoke Bluffsの上部に、良いクラックエリアがありそうなので、行ってみることにした。
 20分弱歩くと、森の中に、忽然と岩場が見えて来た。ここがOctopus Gardenだ。

 まず、このエリアの看板ルートであるOctopus Garden .8に取り付いた。ハンドジャムとフットジャムの練習に良いルートだった。
 次に、Pipe Dream .8を登ったが、こちらはヒール アンド トゥーがばっちりと効いた。このルートを登れないというバンクーバー在住の韓国人カップルが居合わせたので、Sさんがこのテクニックを教授。このカップルは昨年も私達を見たと言い、来年もまた会いましょう、と言って帰って行った。

 そして最後に、Unearthly Delights .9とElectric Balls 11bを登って終了。
 当初、明日はAngel Crestを登ろう、と言っていたのだが、体全体が疲れ果てて、明日は様子を見ようということになった。

9月15日 レスト
 朝、起きると、サーッと雨が降って来た。全員一致で、今日をレスト日にすることに決定。
 昼頃から、バンクーバーのマウンテン・ショップに出かけた。このショップの屋上に駐車場があるので、ここに止めて、1時間1.5ドルのチケットを買った。

 ショッピングを終えて戻って来ると、赤紙がバンパーに挟まれていた。確かにショッピングに2時間ほどかかってしまったので、時間超過してしまったのだ。超過料金を数ドル払えばいいと、たかをくくっていたのが大間違い。なんと69ドルの罰金。そして、腹が立つことに、1週間以内に払えば、34ドルにディスカウントするというこの書き方だ。

 Jさんに聞くと、バンクーバーは駐車に対して非常に厳しいとのことだ。あーあ。業に入れば業に従わなければ‥。高い授業料となった。

9月16日 Murrin
 青空が見えて来て、今日はクライミング日和になりそうだ。まだ、行っていないMurrinエリアに向かった。
 駐車場を降りると、すぐにThe Bog Wallがあり、簡単そうなクラックがあるので、すぐに取り付いた。
 Up From The Bog .8, Black Butterly .9
 どちらも自分でプロテクションを取りながらリードをすると、トップロープで登る場合に比べて倍以上の力が入ってしまう。易しいところをたくさんリードして、経験を積みたい。

 Browning Lakeの横を通って、Petrifying Wallに向かった。
 このエリアに入ると、垂壁の高さに圧倒されてしまった。まず、いきなりNo Name Road 11bに取り付いたが、70mロープを使ってもぎりぎりでしか降りて来れない。下部のランプ部分はもう1本のロープが必要だ。ランプ部分にボルトはないが、結構しょっぱい。Sさんはワイヤーナッツを数個かませてランプ部分をクリア。
 そして、ボルトのあるラインに入った。花崗岩特有のカチがずっと続き、なかなかレスト出来ない。核心を越えて、やっとでガバだ。まだルートは3分の1以上残っている。
 そして、最後にハング越えだが、ガバは非常に遠い。リーチのない人は左からマントリングで越えて行くしかない。終了点まで着いて降りて来ると、10分ぐらいは動きたくなかった。でも、このエリアを代表する素晴らしい入門ルートであることに変わりはない。

Octopus Garden .8を登るTさんUp From The Bog .8を登るTさんNo Name Road .11bを登るSさん

9月17日 Penny Lane, Ronin's Corner
 晴れ。今日はこちらへやって来て、一番暖かい日だ。
 まず、Penny Laneのエリアへ向かうが、少しの上りでも足を挙げるのが億劫だ。やはり、疲れが溜まっている。
 Sさんは「クラックにウォーミングアップなんてない」と言って、いきなりPartners In Climb 11aに取り付いた。核心は両手が左に効くホールドの体勢で、両足をフットジャムを効かせながら登る。Tさんは「5年ぶりにこのルートに取り付いた」と言いながら、簡単に登ってしまった。さすがだ。

 次に隣のRonin's Cornerエリアへ移動。
 MCM .6, Magical Child .8を登った後、Elephantiasis 10cを登った。斜めに走るきれいなクラックラインだが、下部は濡れており、上部は痛いほどハンドジャムとフットジャムが効く。私はここで無理をし過ぎて、左の首の付け根を痛めてしまった。もちろん、この2週間余りのクライミングの疲労も溜まっていたのかもしれない。無理をしないことに決めた。

9月18日 Penny Lane
 昨夜はPさん、Tさんも集まって、Farewell partyを催していただいた。料理は天ぷら、肉じゃが、豚の角煮などの日本食を作った。
 というわけで、雨が降っていた朝はのんびりとして、荷物のまとめや、部屋の掃除などを行い、午後2時ぐらいから、Penny Laneに向かった。
 私は昨日の首痛でレスト。SさんとTさんはPenny Lane .9を登ってクラックの状態を確かめた後、Partners In Climb 11aを再トライ。Sさんは見事にRP。今回最後のクライミングを有終の美で締めくくった。パチパチパチ!

 今回もまた、スコーミッシュやその近辺の岩場でお会いし、お世話になった皆様に心より御礼申し上げます。

Elephantiasis .10cを登るSさんPartners In Climb .11aを登るSさんThe Chiefの壁の白い部分はダンシング・ベアのようにも、魔法使いのようにも見える(真ん中の白い部分は脚色している)

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2009年09月03日

カナダ・スコーミッシュ旅行記

 8月21日から9月1日までカナダのスコーミッシュに行ってきました。ここにその旅行記を掲載します。

 現地ではJBさん、TBさん、CCさん、そして、Scrapperから言葉で表現できないほどたくさんのご好意をいただきました。そして、スコーミッシュの陽気なクライマーの皆さんからも新鮮な活力をいただきました。  また、同行させていただいたFさん夫妻からは、クラッククライミングのテクニックをイロハから教えていただきました。  ここに改めて御礼申し上げます。
  ビデオ作品「RELAXATION AT MOMENT -CLIMBING IN SQUAMISH-」のオープニング映像はこちら

8月21日 Vancouver
 YCATでF夫妻と合流し、リムジンバスで成田空港へ。第1ターミナル南ウィングで下車。

 Unitedのチェックインカウンターは人だかりである。驚いたことに、このたくさんあるカウンターで係員は数名しかいない。では、どうやってお客はチェックインしているのかというと、コンピュータのタッチパネル端末を使って自ら処理を行うのだ。
 近所のHさんにこれを話をしたら、それだけで卒倒しそうだ。ここまで省人化が進んでいるとは‥。5年後には人も完全にいなくなって、ロボットだけになっているかも。

 サンフランシスコに日本時間で午前3時到着。こちらの時刻は21日の午後0時。さて、ここでも一旦、入国審査を通らねばならない。審査官の前に進み、両手の指紋をチェックされ、メガネを外して顔のチェックをしているとき、審査官がいきなり話かけてきた。"Your glasses are nice!" "Thank you so much."と、答えたけど、メガネを誉められてどうなるってんだ?

 1時間遅れて、ようやくVancouverに到着。CCさんが出迎えてくれた。車でStanley ParkなどVancouverの街を紹介してくれた後、一路Squamishへ。
 車の中で、CCさんは次のように語っていた。「昨年までSquamishに来る日本人クライマーは数パーティだったのに、今年は日本人クライマーをいたるところで見かけますよ。」
 ま、そのうちの一人が私と言うことにもなるけれど‥。

 SquamishのBさん宅に到着。

 「これから1週間ご厄介になります。宜しくお願いします。」は日本人のセリフだけど、この「宜しくお願いします。」が英訳できないのであった。韓国語では「チャル・プタクハゲッスムニダ」っていうんだけど・・・。インド・ヨーロッパ語族とウラル・アルタイ語族との違いかなあ。

Vancouverに入る高台からVancouverの街を見下ろすBritish Columbia産Siraz種の珍しいワイン


8月22日 Neat And Cool
 朝起きて窓から正面を眺めると、Squamishの入り江と下町がきれいに見える。左手にはSquamishの看板ウォールThe chiefの北面が大迫力だ。氷河が削ったU字谷の景色が美しい。

 朝食を済ませた後、玄関を出て50m歩くとNeat And Coolの岩場に到着。ここに住む人は岩と共に生活している。
 岩質はきめの細かい花崗岩。クラックとスラブのメッカである。早速、Flying Circus 5.10aから取り付く。トップロープなんだけど、お尻が引けてしまう。馴染むまで少し時間がかかりそう。Fear of Flying 5.11a, Geritol 5.10c, Ali Butto 5.11a, SM's Delight 5.10b, Mosquito 5.8, Sphinx'ter Quits 5.8をトライ。

 夕方、充実したクライミングを楽しんだ後、お世話になっているBさん宅へ帰宅。そして、今日はJBさんの誕生日なのだ。そのバースデイパーティのために、20数名のクライマーが集まってきた。その中には私達と同様に昨日到着した日本人クライマー4人も含まれる。陽気で楽しい仲間達の素晴らしいパーティだった。

50m歩けば、そこは岩場Flying Circus 10aを登るTBさんGeritol 10cを登るCCさん


8月23日 The Chief - Grand Wall Base
 朝寝坊をしてしまった。5時ぐらいに目が覚めてしまったので、それから7時頃までこのレポートを書いていた。少し横になろうとベッドに横たわったら10時まで爆睡。SFさんがドアを叩かなっかたら、もっと寝ていたかもしれない。

 買い物に出かけて、午後からThe Chief - Grand Wall Baseエリアに向かった。
 The ChiefはSquamishの看板ウォール。Grand Wall Baseエリアはその基部である。見上げると、すごい大きさだ。そして、綺麗なクラックが何本もスーッと走っている。通常なら、日曜日なのでいつも混んでいるそうだが、今日は誰もいない。TBさんは非常に珍しいと語っていた。
 それなら、人気ルートから始めようということで、Exasperator 5.10cに取り付いた。2ピッチ60m。白いクラックが1ピッチ目は真っ直ぐ、そして、2ピッチ目は逆くの字上に伸びている。SFさんはこの2ピッチを一気に、いつも登っているかのようにオンサイト。そして、TBさんは逆くの字の上の部分を手と足を伸ばし、そして、手とつま先がくっつきそうなぐらいなレイバックで華麗に登った。

 次にトライしたルートはSeasoned In The Sun 5.10a。フットホールドのつま先がクラックにきまって痛い。下手な私はその痛さに耐えきれずテンション。
 今日はこの2本のルートで十分に満足した。

Exasperator 10cを登るSFさんExasperatorの核心Seasoned In The Sun 10aを楽々と登るTBさん


8月24日 The Zip
 今日は滞在させていただいている家のJBさんとTBさんはお出かけ。この家の犬Scrapperの散歩を申しつかったので、一緒に岩場まで連れて行くことにする。これは正確な言い方ではなかった。Scrapperはこの辺りでは知らない人がいない有名犬なので、お供をさせていただくと言った方が適切だ。

 最初はThe ZipエリアのThe Zipというルートに取り付いた。実を言うと、今日の朝、SFさんから何度も説明していただいているクラッククライミングテクニックのコツが頭の中で少し理解出来たのだ。このルートで試してみたら、なんと、急に動きが良くなったではないか。これまで苦痛だったクラッククライミングが急に面白くなってきた。いいぞ、いいぞ。

地元では有名なScrapperThe Zip 10aを登るTFさんPenny Lane .9に軽々と取り付くSFさん


8月25日 レスト
 本日はレスト日。昨夜、予想通りに雨が降った。これじゃ登れないよね。

 9時20分、Squamishを出発するバスに乗り込み、VancouverのRoyal Parkで降りた。CCさんが車で迎えに来た。今日は彼女がVancouverの街を案内してくれる。

 まずは子供たちがカヤックを楽しんでいるDeep Coveという入り江のドーナツショップで朝食をとった。サンドイッチとカプチーノを食したが実に美味しい。

 クライミングショップで買い物をした後、UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)の敷地内へ。ローズガーデンを通り抜けて新渡辺記念庭園へ行く。CCさんはNitobe(にとべ)をナイトビーと発音していた。ここでもカルチャーの違いを感じる。数ヶ月前に天皇陛下、皇后陛下もここをご訪問されたという。そういえばTBさんは両陛下ご訪問の際にフライトアテンダントをしたと言ってたっけ。
 次にCCさんはビーチに私たちを連れて行った。このビーチへの降り口に「Closing is optional 」と書かれた看板があった。降りて行くと、そこはヌーディストビーチ。もちろん、ヌーディストばかりではなく、サーフィンや散歩を楽しんでいる人達もいる。そして、一番驚いたのはこのビーチもUBCの敷地内だということだ。この大学に入学した学生は卒業したくなくなるのではないだろうか。
 帰りの上り口には「Clothing is required」と書かれた看板があり、ここから先は秩序を取り戻さなければならない。俗世間に戻るということなのだろう。

 美しいSunsetを見ながらCCさん宅へ。木立に囲まれた閑静な場所だ。ドアを開けて中に入ると香りの良いお洒落でカラフルな石鹸が大量に出来ていた。彼女は石鹸を作るのだ。つまり、石鹸女なのであるが、日本で訳すと変に間違われそうだ。

食欲をそそるサンドイッチここから衣服を着けるのはオプションこのビーチもUBCの敷地内


8月26日 Nightmare Rock
 CCさん宅で起床。彼女は今日も有給を取って、クライミングに一緒に出かけると言う。今、こちらに滞在しているもうひとつの日本人グループYHさん達とNightmare Rockで合流。このエリアは大きなオーバーハングがある。このコーナーをトラバースするルートGrandaddy Overhang 11cに、SFさんが果敢に取り付いた。
 ここは垂直の壁とオーバーハングの間にクラックが走っており、それをアンダーハンドで効かしながらトラバースする。なおかつ、そのクラックに慎重にカムをきめなければならない。いやでも緊張が高まる。
 私もフォローで取り付いたが、こういうルートをリード出来るようになったらいいなあ。

Grandaddy Overhang 11cを登るSFさんGrandaddyをフォローするTFさん トラバースなのでフォローといえども怖いPerspective 11aをオンサイトするSFさん


8月27日 The Chief - Grand Wall Base
 今日はマルチピッチにチャレンジした。The Chief - Grand Wall BaseのPeasant's Route 10c 6ピッチである。
 1ピッチ目の出だしにレイバックがあり、いきなり緊張した。これが続くのかと思うとぞっとしたが、数メートル登ると楽になった。やれやれ。

 このエリアは、朝は日陰で涼しい。昼から太陽の光が当たってくると暑くなる。
 高度が上がってくるとSquamishの街全体が見えてくる。筏で上流から運んだ木材が入り江に積まれ、そして、大きな貨物船がゆったりと停泊している。ライトブルーの空、遠景には氷河を抱いた凛々しい山山、深い針葉樹や広葉樹の森。ため息をつくような美しさだ。

 最後のピッチは凹角を途中まで進み、そこから大きく乗り込んで左のフェイスに出なければならない。フェースに立ち上がるとき、すごい高度感で腰が引けてしまう。SFさんはこのルートファインディングを間違わずに切り抜けた。さすがだ。
 そして、終了点。最後は握手をしてジ・エンド。

 この隣のマルチピッチルートにはドイツ人グループ7人が取り付いていた。このルートの途中に、ナイフのようにスパッと切れた40mのクラックがある。怖いほどに美しい。あのクラックを登るとなると、しびれるだろうなあ。

Peasant's Route; 5 pitch目 SFさんはランナウトしても集中して登っている6 ptich目の核心部をルートファインディング6 pitch目のアタック開始


8月28日 The Grand Wall
 出張から帰って来たJBさんと、そしてその奥さんのTBさんも一緒にクライミングに行くことになった。行くところはなんと昨日ドイツ人グループが登っていたマルチピッチルート。Squamishを代表する有名ルート The Grand Wall である。
 なんでそうなるの? あの40mのスパッと切り立ったクラックを登らなければならないと思うと、ルートに取り付く前から緊張する。

 1ピッチ目。前のパーティのセカンドがナッツを回収出来ないでいる。セカンドの女の子は頭が真っ白になっているに違いない。可哀想に。結局、彼らは回収を諦めて1ピッチを登っただけで降りてしまった。1ピッチ目と2ピッチ目のクラックもそんなに簡単だというわけではない。
 3ピッチ目と4ピッチ目はボルトが3本ぐらいしか打っていないスラブ。これを登りきった時点でThe Grand Wallの傾斜が寝ている部分は終わり、Verticalな世界が始まる。
 5ピッチ目は右方向へトラバース。Pillerの一部である一枚岩の下側をへつる。一旦下がって、また、登るのだが、横から撮影するとSquamishの入り江の遠景が見えて高度感がある。
 6ピッチ目はボルト3本のA0。

 そして、7ピッチ目はいよいよ核心のSplit Piller。スパッと見事に切り立った40mのクラック。SFさんはジャムを決め、カムをセッティングしながら、安定して登った。この美しいクラックを楽しく味わって登っているようだ。
 次に私の番だ。SFさんが持っていかなかった残りのカム類を持って上がれという。重い。ここに置いていっちゃいけないの。懸垂するときに回収すればいいのだから。これじゃ新人いじめのしごきじゃない??? ついつい泣きが入る。ビデオカメラと余ったカム類を肩から提げてトライ開始。
 クラックの長さと高度感で怖さが先に出て、これまで習ってきたハンドジャムのテクニックなど吹き飛んでしまった。この40mをレイバックで必死になって登った。もう最後はヨレヨレ。でもまあテンションをかけずに登ったからいいか。これをリードするなんて、今の自分にはまったく想像できない。

 TFさんが軽々とフォローし、登りきったところで、みんなで握手。
 このルートを登ったなんて、まったく信じられない。また次回ここに来る機会があるならば、再登したいとも思うが、リードは・・・・。

一瞬のくつろぎ The Grand Wall; 3 pitch目終了点The Grand Wallの核心Split Piller 40mを登るSFさんSplit PillerをフォローするTFさん


8月29日 Penny Lane, Split Beaver
 今日でSquamish最後のクライミング。近くのPenney Laneの岩場へ行き、Quarryman .8とClandestine Affair .9をリードで登った。昨日登ったSplit Pillerの怖さを考えると、リードといえど、今日のルートは全然気が楽。

 それから、SFさんがたっての希望のワイドクラックにトライ。Split Beaver 10b。
 このルートのクラックは最初、フィストが効くぐらいの大きさだが、段々と広がっていき、最後は肩まですっぽりと入るような大きさだ。そして、登りきるところではホールドになるようなものはなく、フレアしていてツルツル。
 SFさんはこれを体を上げてぐいぐいと登っていく。最後は気合でクリア。お見事!としか言いようがない。次に私もトライしたが、足は効かないし、肩はずっぽりと入って、登るような格好にならないし、途方にくれた。引きずり上げてもらってようやく終了点に達した。

 SFさんはこれを忍者の技だという。私は忍者でないので登ることができないのだ。ちょっと待てよ。ということはSFさんは忍者だということになる。伊賀か、甲賀か、今度会ったら聞いてみよう。

 夕方、お世話になった皆さんと一緒にSquamishのレストランへ行った。ほんの気持ちだけではあるが、私達が支払いを済ませた。そして、JBさん、TBさんとお別れのあいさつ。
 「このような素晴らしい歓待を受けて本当に楽しく、充実した毎日を送ることができました。本当にありがとうございました。」というようなことを英語で言いたかったけど、何と言っていいかわからず、「Thank you, thank you, thank you」で終わってしまった。ちょっと情けなかったが・・・。
 TFさんに辞書で調べていただいたら、「I had the time of my life.」という言い方があるそうだ。次回、使ってみようと思う。

 CCさんの車に乗って、VancouverのCCさん宅へ向かう。明日は朝8時発のフライトなので、5時半にはCCさんの家を出なければならない。というわけで、この晩は早く寝るかというとそういうわけにはいかないのだ。CCさんの石鹸作りのお手伝いをする約束をしてしまった。
 CCさんはナポレオンのように少ない睡眠時間でもへっちゃらのようで、活き活きとして石鹸作りを伝授し始めた。
 ここのキッチンはすごい。普通とまったく違う。塩、砂糖、胡椒、醤油などの調味料があると思ったら大間違い。あるのは酸やアルカリの無数の化学薬品。冷蔵庫を開けても、電子レンジを開けても、あちらこちらに化学薬品のビン、ビン、ビン。ジキル氏とハイド氏を思い起こさせてしまう。彼女は怒らせない方が良い。
 私が石鹸作りをすると言ったものの、実際はTFさんが一人で石鹸作りをする結果となってしまった。きっちりといくつかの薬品のグラムを量り、加熱する。73℃になったらもう一方の薬品と混合。化学反応をゆっくりと起こさせながらかき混ぜる。固まり始めると、色を付けたり、香りを付けたり、ハーブなどあしらってお化粧をしたりとこの部分はまさにアートだ。棒状の木枠の型に流し込んでおしまい。固まるまで3日かかる。そして、それを通常使う四角の大きさに切って、さらに一ヶ月間放置。これで完成となる。石鹸作りは大変なのだ。
 もう午前1時を過ぎてしまった。寝よう。

Split Beaver 10bをオンサイトするSFさん>石鹸作りは正確な分量が大切2色を混合してカラフルな石鹸に仕上げる


8月30日 LA
 5時半過ぎにCCさん宅を出発し、Vancouverの空港へ。CCさんには荷物を預けるところの最後の最後まで、しっかりと見送っていただいた。本当にありがとうございました。

 帰りはLA経由の成田行きだ。LAに到着してフライト情報を見ると、私達が乗る予定のフライト便がキャンセルになっている。東京に台風が接近しているからだ。
 私は何百回も飛行機に乗っているが、幸運にもこれまでキャンセルに遭遇したことはなかった。今回が初めてである。インフォメーションカウンタは長蛇の列。係員の話によると、まだフライトの見通しが立っていないとのこと。配布している赤い紙に書かれた電話番号に連絡しホテルの部屋を取り、そこから今後のフライト情報を確認して、代替のフライト便の予約を取って欲しいという。
 仕方が無い。TFさんが電話でヒルトンホテルの部屋を確保した。ひとまずホテルに入り、フロントの係員から再度フライトの予約をしてもらった。その結果、明日の同じフライト便で予約が取れた。

 安心したところで、バスに乗ってビーチに出ることにした。日曜日ということもあって、ビーチは人、人、人。Vancouverから南に3時間下ってきたこともあって、ここは暑い。考えてみれば、北海道から沖縄へ行くようなものだ。通りにある一軒のパブに入ってビールをあおった。
 こういう展開になるとは誰が予想しただろう。旅は本当に面白いものだ。


 今回お世話になったJBさん、TBさん、CCさんとSFさん、TFさんとの縁はギリシャ・カリムノスで昨年出会ったことがきっかけだと聞いた。SFさんとTFさんのカリムノス行きは、3年前に私の書いたカリムノス旅行記が多少なりとも参考になったという。つまり、ギリシャ・カリムノスが縁なのである。
 しかし、これほどまでにゲストとしてお世話になってよいものかとも思ってしまう。私にご恩返しが出来るとすれば、ビデオ作品を作り、想い出として残してあげるぐらいのものだ。
 でも、私の気持ちとしては彼らにご恩返しできない分を他の方のお世話をすることによりお返ししたいと思う。そして、私から世話を受けた方がその恩返しとして、その次の方のお世話をすることでお返しするならば、世の中めぐりめぐってよい世の中になるのではないかなあ。

投稿者 sue_originalcv : 11:41 | コメント (4) | トラックバック

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