2011年06月01日

韓国・インスボン(仁寿峰)旅行記

 5月23日から27日まで韓国ソウル近郊のインスボン(仁寿山)へ行き、シュイナードAとシュイナードBの2本を登りました。これはその記録です。
 この旅行でお世話になった皆様、この場を借りて御礼申し上げます。

 オープニング映像はこちら
 

5月23日 白雲山荘
 横浜在住者にとって成田空港はあまりに遠い。まして、ソウル行きのフライトの場合、横浜から成田空港へ行く時間と、成田空港からソウルへ行く時間とどちらが長いのかを真剣に考えてしまう。つまり、横浜在住者にとって、羽田空港は便利だということだ。

 羽田空港は国際線ターミナルが新築され見違えるようになった。旧来の国際線ターミナルは現在取り壊されつつあり、将来は駐車場になるのだろう。
 
 さて、今回は九州から参加のKさんを加えて、総勢4人のメンバーとなった。免税店で李さんに頼まれたお酒と私たちが飲むお酒を購入して、出発は準備万端整った。

 金浦空港へ降り立つと、あわてずに地下鉄の駅へ向かう。20年前の地下鉄の路線とはあまりに違い過ぎる。今は東京のメトロと同じように網の目のようにソウル市内を地下鉄が通っている。ということはタクシーなどを使わなくても、地下鉄で行った方が安いし交通渋滞を気にかけることもない。時間の計算ができるということだ。

 地下鉄に乗るには自動券売機でカードを買わねばならない。スユ駅まで1500Wだが、保証金500Wと合わせて2000W払う。保証金500Wは駅の改札口を出たところで払い戻し機にカードを入れると戻って来る。自動券売機では目的地のアルファベットやハングルを入力しなければならないが、慣れていないと結構時間がかかってしまう。
 私たちはインターネットでソウル地下鉄の路線図を入手していた。これには地下鉄駅に番号がふっており、目的地の地下鉄の番号を自動券売機に入力すると簡単だった。ちなみにスユ駅は414番。金浦空港駅からは5号線から4号線に1回乗り換えればOK.
 ただし、地下鉄の最大の欠点はソウルの風景が見えないことだ。味気ないことは否めない。

 スユ駅へ到着。ソウル市庁から見て、金浦空港駅は南西方向にあり、スユ駅は北東方向にある。つまり、私たちは地下鉄で、知らぬ間にソウルのど真ん中を突っ切って反対側に出たことになる。地下鉄の中ではまったく風景が変わらないし、あーあ。

 廣瀬アルパインスクール発行の「仁寿峰と白雲山荘」(1,800円)に書かれている通りに、スユ駅からトソンサまでタクシーに乗った。トソンサとは北漢山(ボッカンサン)(別名:三角山)の麓にあるお寺の名前だ。また、北漢山(ボッカンサン)は白雲台(ペグンデー)836.5m、仁寿峰(インスボン)810.5m、萬景台(マンギョンデー)799.5mの3峰を含む山域の名称だ。白雲台(ペグンデー)は一般の登山者が登ることができるが、仁寿峰(インスボン)は装備を付けたクライマーしか登ることができない。萬景台(マンギョンデー)は一般登山道からはずれており、進入禁止となっている。
 私は仁寿峰(インスボン)が単独の山だと思っていたのだが、それは間違いで、北漢山(ボッカンサン)にある3峰の中のひとつであった。

 さて、トソンサからは1時間強の登りである。歩く前の基本体操やストレッチをするような写真があるが、それは見過ごして20kg強のザックを背負って歩き始めた。どっと汗が出てくる。ボッカなんて、もう何年もやっていない。やっとの思いで白雲山荘に着いた。
 山荘のご主人の李永九さんが出迎えてくれ、ポカリスウェットをご馳走になった。コマッスムニダ。

トソンサ広場基本体操やストレッチングの写真白雲山荘までの登り

 本日の夕食は付きだしにサムギョプサル(豚三枚肉)だった。ここまで荷揚げしなければならないことを考えると、この夕食はご馳走である。日本から持ってきたお酒を李さんと一緒に飲みながら、楽しい一日が暮れていった。

ウイドンから北漢山(ボッカンサン)へのコース白雲山荘の夕食李さんに韓国の歌をお披露目

5月24日 シュイナードB 5.9
 清々しい朝。白雲山荘は標高700mぐらいあるので、肌寒いかと思いきや、そんなには冷え込まなかった。

白雲山荘に上がる朝陽白雲の魂白雲山荘と白雲台(ペグンデー)

 本日はシュイナードB 5.9を登ることになった。インスボンへ行く道がよくわからなかったので、白雲山荘の裏手から登り、尾根を越えてインスボンの取り付き点まで下ったが、後で近道があることを知った。
 インスボンの東南面の末端をぐるっと回って、シュイナードBの取り付きに着いた。クラックが這うようにして頂上まで続いている。楽しそうなルートだ。

<1ピッチ目 5.7>
 スラブにボルトが打ってあるが、それは使わず左のクラック沿いに登る。インスボンの岩の手触りとスメアリングの感触を味わいながらビレーポイントへ到達。

<2ピッチ目 5.9>
 指先しか入らないアンダークリングホールドを捜しながら慎重に登る。ところどころ濡れているところもあり、少々緊張した。

末端よりインスボン東南面を見上げるシュイナードB 1ピッチ目シュイナードB 2ピッチ目 アンダークリングホールドを拾いながら慎重に登る

<3ピッチ目 5.8>
 右のクラックにハンドトラヴァースで移る。後は快適にフレークを登る。

シュイナードB 3ピッチ目 ハンド・トラヴァースシュイナードB 3ピッチ目 フレークを快適に登るシュイナードB 3ピッチ目

<4ピッチ目>
 斜上するワイドクラックを登ると、両側にクラックがあるグルーブに出る。このグルーブを登るとき、観音開きのようにして登ると腕力がいる。このようなとき、手のひらを内側に向けて、内懐に手を入れるような形でクラックにジャミングを効かせると、力を使わずに登ることができる。左側のクラックには右手で、右側のクラックには左手でジャミングを効かせる。Sさん曰く、「技を使うですよ!」

シュイナードB 4ピッチ目 ワイドクラックを斜上シュイナードB 4ピッチ目 グルーブの左のクラックには右手をジャミングシュイナードB 4ピッチ目 グルーブの右のクラックには左手をジャミング

<5ピッチ目>
 Sさんはワイドクラックに入ると、いきなりスクイーズチムニー登りを始めた。次から次へとクラックの技が出てくる。見ているだけで楽しいし、この撮影したビデオはクラックテクニックの教科書になりそうである。

シュイナードB 5ピッチ目 スクイーズチムニー登りシュイナードB 5ピッチ目 やはりアルパインは楽しくなければ・・・医大ルートを下降しオアシステラスへ

 その後、インス南面に向かい、ショートピッチを楽しむことにした。このエリアは地元のクライマー達がトップロープで楽しんでいた。彼らは本当に陽気で親切だった。きなこや餡が入ったヨモギ餅や果物をしきりに「召し上がれ」とすすめてくれた。
 また、ヨジョン 1ピッチ目 5.10cにトップロープで取り付いている男性が核心部を突破できないでいると、女性3人が「ヨジョンだー!」(ヨジョンとは漢字で「女情」)と言いながら引き上げていた。なんとも微笑ましくおおらかだ。

5月25日 シュイナードA 5.10b
 朝から薄曇の天気だった。天気予報では明日は雨だ。
 シュイナードAの取り付き点に着くと、後から10人前後のクライマーがやってきた。ガイド付き登山だろう。女性のクライマーが多い。彼女らは頭から爪先までばっちりとファッションを決めている。お洒落なのだ。付け睫毛も標準装備のひとつではないかと思えるぐらいだ。韓国も豊かになったのだなあ、とつくづくと感じさせられた。

<1ピッチ目>
 階段状のところを登りテラスへ着く。ウォーミングアップにちょうどよい。

<2ピッチ目 5.8>
 ここから見上げると、シュイナードAルートは頂上直下までスパッと切れ上がったきれいなクラックである。リードをしたSさんは次のビレーポイントが見えなかったようで、3ピッチ目の途中まで登り、隣のシムルートのビレーポイントを利用することになった。
 2ピッチ目の最初はワイドで段々と狭くなってくる。途中、片足でヒール・トウーを決めるには広過ぎるし、バック・アンド・フットを決めるには狭過ぎるところが出てきた。 下から、Tさんが両手を交差してTスタックをするのだ、とアドバイスをいただいたが、練習していないものをいきなり本番で使うことは難しい。

朝陽とインスボン 白雲台よりシュイナードA 2ピッチ目 テラスからルートを見上げるシュイナードA 2ピッチ目 バック・アンド・フットを決めるTさん

<3ピッチ目 5.8>
 クラックルートにも関わらず、ルート途中に1個ボルトが打たれている。やはり、この辺りが難しい。ハンドジャムもフットジャムも決められずにおろおろしていると、後続の関西からやって来たクライマーAさんに声をかけられた。
 「その辺りでよく事故が起きているのよ。そこはレイバックで越した方がいいよ。」
と言われ、体勢をレイバックに代えてトライすると、あら簡単!!! 今までの苦労は何だったのかと思ってしまう。この壁は多少寝ているので、レイバックでも腕にあまり負担にならない。これは早くて快適だ。あっという間にビレーポイントに着いた。

シュイナードA 3ピッチ目ヒール・トウを決めるシュイナードA 3ピッチ目 レイバックで登ると楽だった

<4ピッチ目 5.10b>
 核心のハングのクラックを越えても、嫌らしいクラックが続く。私は後続の方もいらっしゃるので、ハング部分は迷わずA1で乗り越え、その後のクラックも尺取虫のようにごそごそと這い上がっていった。

シュイナードA 4ピッチ目 ハングの核心部を越えるSさんシュイナードA 4ピッチ目 レイバックで攻め続けるKさんシュイナードA 4ピッチ目 最後の難しいところを越えるTさん

<5ピッチ目>
 チムニーを登らず、右に回り込んでスラブを登る。

<6ピッチ目>
 左にトラバースしてシュイナードBの終了点に出ておしまい。

 今日は多くのクライマーで混雑した。オアシステラスまでラッペリングして降りてくると、そこではマッコリで一杯やりながら盛り上がっていた。そこまで荷揚げするのも大変だろうが、高所で飲む一杯は下界で飲む一杯と一味違うらしい。

5月26日 下山
 朝方、ぱらぱらと雨が降った。関西からやって来た皆さんはクライミングに出かけていった。私たちは不安定な天気とお風呂に入りたいという欲求で下山することにした。李さんにお別れの挨拶をした後、ぼちぼちと下った。

何故かしら、牧師さんによる日本語の賛美歌を聴く李さんを中心とした集合写真大山蓮華

 トソンサでタクシーを捜したが、見当たらないので、バスでウイドンまで下った。このバスはウイドンとトソンサのピストン運行だが、バス料金を払うというよりは仏様の前の賽銭箱にお布施するといった形だ。
 ウイドンで再びタクシーを捜し「スユ駅まで行ってくれ」というと、「近いから行かない」と乗車拒否されてしまった。仕方がないので、再び路線バスに乗り、スユ駅で下車。

 地下鉄で東大門市場にある登山用品店に向かう。この店には3年連続でやって来ているので、店員と顔見知りになっている。「今年も着たね。」と言った感じだ。Tさんの交渉術により、今年も大いに安くしていただいた。コマッスムニダ。

 ところで、ビックリしたのが、この登山用品店の隣にマムートのブランド店ができている事だった。値引きは一切しないという。明洞(ミョンドン)、アックジョンドンにあるお店だったらわからないことはないが、ここは安さを誇る東大門、南大門、イテオンの一角だ。昔だったら想像することもできないが、今や時代がどんどん変わっているということなのだろう。

5月27日 景福宮 
 昨夜泊まった宿は、関西のクライマーOさんから教えていただいた景福宮駅近くにある大元旅館である。4人一部屋だったが、一人19,000W。トイレ、炊事場は共同だが、小ぎれいで全然ケンチャナーヨ。これならば、韓国に来るにはフライト代さえ解決すればOK。日本の中で遠出のクライミングをするよりはずっと安く上がる。

 午前中、景福宮に訪れた。昼ごろ、守衛の交代があるのが見物だ。韓国も観光にはずいぶんと力を入れているようだ。
 近くて遠くない国、韓国。これからは日本の国内旅行と同じ感覚で韓国に来ることができそうだ。横浜から鳳来へ出かけるよりも、インスボンへ行った方が良いという日が来るのはそう遠くないかもしれない。

大元旅館景福宮景福宮 光化門

投稿者 sue_originalcv : 11:42 | コメント (1) | トラックバック

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